映像作品としての最高到達点 「コンパートメント」イラストで解説
1984年9月1日ユーミンがミュージック・ビデオ「コンパートメント(TRAIN OF THOUGHT)」をリーリースしました。
ビデオ(VHS・Beta)、LD、VHDでの発売です。
撮影はグリーンバックフィルムズ。
監督はストーム・トーガソン、Pink Floyd、Led Zeppelinなどのジャケットで知られるアートデザイナーです。
ロンドン・ヴェネツィア・ウェールズなどで大規模なロケが行われました。
ミュージック・ビデオとしては異例ともいえる大作です。
1985年にはアメリカ・カナダ・イギリスなどでも発売され、初の海外進出を果たしました。
僕ももちろん購入しました。
VHSで(当時12000円)。




MVというより短編映画集
収録曲は・・・
~プロローグ~
1.街角のペシミスト~ツバメのように
2.経(ふ)る時
3.ハートブレイク
4.時のないホテル
5.DANG DANG
6.ツバメのように
7.DESTINY
8.不思議な体験
~エピローグ~
全8曲、収録時間58分。
ファンの方ならお分かりになると思いますが、選曲が渋い!
個人的には「経る時」が入っているのがうれしかったです。
アルバム「時のないホテル」に「コンパートメント」という曲が収録されていますが、このビデオ集には入っていません。
ビデオ集とはいっても、列車の個室「コンパートメント」をモチーフにして、「思考の旅」「記憶の断片」「時間の迷宮」などのテーマで曲ごとの映像をオムニバス映画のように綴っています。
主演はもちろんユーミン
全体としては1本のショートフィルムのような作りですが、主演はもちろんユーミン。
「ビノ」という役名で演技をしています。
「ビノ」という名前は当時のユーミンのマネージャーさんの名前だったようですね。
エンディングのクレジットに名前があります。
物語は駅の公衆電話でビノが電話をかけているところから始まります。
※以下ネタバレを含みます。
プロローグ
アーティスト(歌手)ですが、「彼とはもうダメなの」と話し、レコーディングを勝手にキャンセルして田舎に向かうと電話の相手に告げています。

ボストンバックを持ち、ヨーロッパの都市間列車の寝台個室に乗り込みます。

上着を脱ぎ、コップに水を入れてベッドに腰かけ、テーブルに薬瓶から大粒の薬を並べていきます。
彼とのけんか、煮詰まったレコーディングなどが頭に浮かぶ、やがて眠りに誘われます。

街角のペシミスト
1曲目にこの曲を持ってくるなんて。
ユーミンのアイデア?松任谷正隆氏?監督からの要望?
これだけでもこのビデオが普通のものではないことがわかります。
映像は都会の繁華街を彷徨う少女を探偵が捜索するというもの。
探偵に掴まり、ユーミンが「街角のペシミスト」を歌っているスタジオ(バー)に連れてこられ、ユーミンに優しく話しかけられます。

歌は「ツバメのように」になりますが途中でフェイドアウト。
経る時
場面は変わって、ヴェネツィアのゴンドラに老紳士が乗り込む様子が映ります。
ヴェネツィアの美しい風景を映しながら、老紳士の昔の記憶が重なります。
女性と二人で廻ったヴェネツィア。
桜並木の下を二人で散策。
桜というと「日本」の象徴ですが、少し低めの並木というより、桜の林の中を楽しそうに歩いて行きます。
「経る時」は千鳥ヶ淵にあったフェアモントホテルをモチーフに作られた曲ですが、イメージは違うもののしっとりとした映像で曲に寄り添ったものになっています。

ハートブレイク
場面は撮影現場に変わり、ユーミンが監督に向かって「ハーイ、ストームさん」と笑いかけます。
コートの襟を立て、雨降りの街角でダンサーとミュージカルのように踊り、歌います。

8曲の中ではアップテンポの曲。
ユーミンの演技は見ていてハラハラする部分がありますが、コンサートで鍛えたダンスについては申し分ありません。
「シェルブールの雨傘」みたいに全編歌でつないだらよかったのに、なんて。
時のないホテル
場面はまた変わり、古いホテルが舞台。
スパイたちが暗躍しています。
ユーミンは宇宙人のような恰好で傍観者的な立場。

コンサート「ブラウンズ・ホテル」を彷彿とさせる造りです。

アルバム「時のないホテル」も短編小説を集めたような作品でしたが、この「時のないホテル」はまさに、曲のイメージを具現化した映像になっています。
DANG DANG
場面はホテルの明るいレストランのような場所に移ります。
ユーミンは女性とテーブルで向き合っています。
別れた彼氏の彼女でしょうか。
ユーミンは部屋でプレゼントを用意し、元カレに会いに行きます。
元カレが包みを開けると拳銃が・・・。
ユーミンは胸をはだけ、元カレが握った銃を自分に向けます。

「DANG DANG」が入っているアルバム「パールピアス」のタイトルチューンともいえる「真珠のピアス」は当時の日本の男性を震え上がらせましたが、それとは違った怖さがありますね。
この場面の映像は富士フィルム「フジビデオテープスーパーHG HiFi」のCMで使われました。
ツバメのように
ユーミンが写真を現像している場面に変わります。

映っているのは「束の間彼女はツバメになった」女性。
歌詞の通りともいえる映像ですが、美しくも悲しい映像となっています。
この曲を選曲するあたりも、尋常ではないですね。
この曲を収録した「OLIVE」は僕も大好きなアルバムでした。
DESTINY
場面はダンススタジオになり、眠っていたユーミンが起こされ、曲に合わせてダンサーたちと踊ります。

「DESTINY」といえば当時コンサートのアンコールの定番曲。
最高に盛り上がる曲ですね。
ダンサーたちも素晴らしく、安心して見ていられるシーンです。
この場面も富士フィルムのCMで使われました。
不思議な体験
スタジオを出て、雷鳴に追われるユーミンが買い物袋を落とし「サイテー」とつぶやきます。
場面は岩山の斜面。
草木が一本も生えていない場所を青いワンピース姿のユーミンが登っていきます。
頂上に着くと天から光が射し、幻想的なシーンが広がります。
「不思議な体験」という不思議な曲。
それを安っぽくなく、映像化したことは素晴らしいですね。
ニッカのCMにも使われた曲です。

エピローグ
曲が終わるころ、コンパートメントのユーミン、ビノが目を覚ますと・・・。
という流れ。

田舎のホームを去っていく場面でEND。
まとめ
「守ってあげたい」のヒット以来、高まり続けるユーミン人気。
そしてそれに応える以上に質の高い作品を発表し続けるユーミン。
このビデオ集はそれを象徴するものと言えるでしょう。
今もDVDとして発売されています。
40年にわたり、販売され続けている事実がこの作品の素晴らしさを物語っていると思います。
発売当時より安く買うことができますので、観たことがないかたはお手に取ってみてはいかがでしょうか。
それでは、また。







