荒井由実最後のシングル発売
1976年3月5日、ユーミンが荒井由実としての最後のシングル「翳りゆく部屋」をリリースしました。

「翳りゆく部屋」のルーツ
この曲の原曲は「マホガニーの部屋」。
さらにさかのぼると1971年5月に発売された加橋かつみさんのシングル曲「愛は突然に」。

この曲はユーミンの作曲家デビュー曲になります。
立教女学院の高1のとき初めて作った歌を加橋かつみさんにに見せたらノッちゃって録音した、というもの。
ただ、レコーディングの時に歌詞は没になり、加橋かつみさんが詞とタイトルを付けたそうです。
加橋かつみさんは超人気グループだったザ・タイガースのメンバーだった方。
沢田研二さんと人気を二分していたそうです。
繊細で芸術家肌の加橋さんは、アイドル性を前面に押し出したプロモーションに我慢できず、解散より一足早く、ザ・タイガースを脱退したようです(1969年)。
そんなころに出したシングルだったのですね。
加橋かつみさんの「愛は突然に」はYouTube等で聞くことができます。
興味があれば検索して聞いてみてください。
「翳りゆく部屋」にも通じる教会音楽的な要素のあるメロディーです。
ユーミンの「マホガニーの部屋」
さて、「マホガニーの部屋」は歌詞だけが残り、宙に浮いた形になっていました。
そこでユーミンはこれに同じコード進行の別のメロディーをつけて、新たな「マホガニーの部屋」にしました。
ただ、ライブ等で歌うことはあっても、レコーディングはされてきませんでした。
このライブ音源もYouTubeで聞くことができます。
いや~SNS恐るべし、最強ですね。
「翳りゆく部屋」誕生!
1976年に松任谷正隆氏との結婚が決まり、荒井由実として最後のシングルを出すことになりました。
その時にユーミンは作曲家としての原点である「マホガニーの部屋」にこだわり、歌詞を変えて「翳りゆく部屋」として発表することを選びました。
「マホガニーの部屋」は歌詞も、孤独や死、内面的な闇を描いた内容でメロディーと相まって重い曲だったのでレコード会社側はかなり渋ったようです。
「翳りゆく部屋」では「死」を扱いながらも失恋の内容とし、「荒井由実」の集大成として仕上げました。
また、この曲は何といってもパイプオルガンが印象に残りますが、教会音楽に影響を受けたユーミンがこだわった事の一つでもあります。
このパイプオルガンは東京カテドラル聖マリア大聖堂のもので、ユーミンはここで歌も録音したかったのですが、それはかなわず、パイプオルガンの音源のみの録音になりました。
ただ、シングルのジャケットはこの教会で撮影されたものです。
ミュージックビデオも教会で撮影され、パイプオルガンを弾く正隆氏、コーラスのハイ・ファイ・セット、山下達郎さん、吉田美奈子さんらも映っているそうです。
残念ながら僕は見ていませんが、映像は2012年のベストアルバム『日本の恋と、ユーミンと。』の特典DVDに収録されているとのことです。
「翳りゆく部屋」は1976年6月20日に発売された大ヒットベストアルバム「YUMING BRAND」に収録されています。

様々なアーティストがカバー
さてこの荘厳なパイプオルガンの音色で始まる「翳りゆく部屋」、僕も今までに何度聞いたかわかりません。
教会音楽、そしてイギリスのバンド「プロコル・ハルム」に強い影響を受けて作られて曲ですが、繊細でありながら強い力を持つメロディーだと思います。
「翳りゆく部屋」は徳永英明さん、畠山美由紀さん、都はるみさん(!?)などいろいろな方がカバーしていますが、その中でも秀逸なのがエレファントカシマシのバージョン。
「STARTING OVER」というアルバムに収録されています。
エレファントカシマシの宮本浩次さんといえば、どちらかというと男くさい、ロック命の人のようですが、野太いボーカルなのに繊細さも感じられる唯一無二の歌声を持つ方だと思います。
宮本さんはユーミンの「翳りゆく部屋」を力強くありながら、この曲の良さを失うことなく歌い上げています。
エレファントカシマシの「翳りゆく部屋」を聞くと、この曲はただ教会音楽をなぞったのではなく、本質はロックなのだということがよくわかります。
配信もされているので是非聞いてみてください。
最近のトピックス、そしてこれからも・・・
ということで荒井由実から松任谷由実に変わる時期のユーミンにとってもとても思い入れのある曲、「翳りゆく部屋」をご紹介しました。
昨年、2025年の紅白歌合戦にユーミンが出演した時に、ユーミンが弾き語りで歌い、さらに正隆氏がNHKホールのパイプオルガンを弾くという前代未聞のコラボを行い、大変話題となりました。
「翳りゆく部屋」はこれからも輝き続けていくでしょう。
それではまた。






