「12月の雨」のB面
1974年10月5日、荒井由実・ユーミンがシングル「12月の雨」をリリースしまたことはすでにお伝えしました。

B面は「瞳と閉じて」。

特徴
モールス信号を思わせるオルガンのC音が印象的なイントロ。
「もっとも簡単で、もっとも美しいオルガンイントロ」とも評されています。
初期の荒井由実らしく、恋愛とかではなく素朴さも感じさせる詩的で抒情的な曲です。
演奏はもちろんキャラメル・ママ。
コーラスは山下達郎さんと大貫妙子さん。
「ルージュの伝言」のようにコーラスが全面に出るようなものではありませんが、青い海を連想させるこの曲に深みを与えています。
誕生の背景
♪霧が晴れたら 小高い丘に立とう
♪名もない島が 見えるかもしれない
海に浮かぶ島。
この曲は長崎県五島列島の奈留島の女子高生から届いた手紙がきっかけで作られました。
ユーミンが出演していたラジオ番組「毛利久のオールナイトニッポン」内のコーナー「あなただけのイメージソングを作ります」で投書を受けました。
女子高生が通っていた奈留高校は当時五島高校奈留分校で校歌は奈留島と関係のないもの。
そこで「自分たちの島らしい校歌を作ってほしい」というものでした。
この時の経緯を荒井由実時代のユーミンが語って、「瞳を閉じて」を歌っています。
♪遠いところへ行った友達に
♪潮騒の音がもう一度 届くように
高校を卒業して島を離れた人たちへの思いを込めた歌詞。
♪海の碧さをもう一度伝えるために
♪今 瞳を閉じて
遠く離れても瞳を閉じれば何時でも思い出せる、というメッセージが込められているように思います。
奈留島と奈留高校
ここで舞台となった奈留島と奈留高校をご紹介しましょう。
奈留島(なるしま)は、長崎県の西に浮かぶ五島列島を構成する島の一つです。
五島列島内では久賀島と若松島の間にあり、現在は全島域が長崎県五島市に属しています。

赤い枠で囲ったところが五島列島。
この真ん中あたりにある複雑な形をした島が奈留島です。

赤い点線の部分ですね。
「文」と書いてあるところが奈留高校です。
拡大すると・・・

五島市の「世界遺産の島 五島」から地図をお借りしました。
地図を見てわかる通り、美しい海に囲まれた土地。

島には世界遺産リストにも掲載されている長崎の教会群とキリスト教関連遺産の構成要素である「江上天主堂」があります。

自然豊かな島にある奈留高校はこんなところです。
Google Mapから。

そしてこの高校には地図にもあるように「瞳をとじて」の歌碑があります。
愛唱歌「瞳を閉じて」と歌碑
奈留高校の校歌としてつくった「瞳を閉じて」ですが、1976年に同校が「長崎県立奈留高等学校」として独立した際も校歌として採用されることはなく、愛唱歌として歌い継がれてきました。
このエピソードはNHKのドキュメンタリー番組『新日本紀行〜歌が生まれて そして〜』で取り上げられました。

校歌として、といっても「奈留島」も「学校」も出てきませんものね。
後年、作詞石本美由起さん、作曲深町一朗さんによる校歌が正式に採用されました。
1988年には同校卒業生の寄付でユーミン直筆の歌詞を刻んだ歌碑が建立され、除幕式にはユーミン本人も訪れました。


石碑の前には経緯を綴ったプレートも設置されています。

一部抜粋。
『~分校時代の昭和四十九年、自分たちの校歌を切望する一人の生徒の投書がきっかけとなり、奈留島の自然のイメージを、美しいメロディーに乗せて抒情豊かに歌い上げた、荒井由実氏(当時)作詞作曲の「瞳を閉じて」が贈られた。
~愛唱歌「瞳を閉じて」は、奈留高校の生徒のみならず、奈留島の誇る宝物として、島の人々の心のよりどころとなっている・・・』
素晴らしいですね。
たくさんの人々の心に響くユーミンの曲ですが、奈留島の人たちには「瞳を閉じて」は特に深く深く沁みわたっているように感じます。
ちなみにこの歌碑は高校の敷地内にありますが、一般の人でもみることができます。
ただ、その際は学校に一声かけるのが礼儀だと思いますし、授業中であれば静かにしましょうね。
でも、高校側も快く受け入れてくれるみたいですよ。
学校が休みの時はこんな表示も掲示されています。

みんなのうたでも
さて、「瞳を閉じて」はNHKの「みんなのうた」でも放送されました。
曲ができてから2年後、1976年8月から9月までです。
ただ、ディレクターから「プロでない初々しい感じの人に歌わせたい」という要望があり、ユーミン自身がそれに応じ、横浜在住の女子高生、善村ゆう子さんをスカウトして推薦しました。
とても初々しい歌声で曲のイメージにも合っています。
レコード化はされず、善村さんもプロになることはありませんでした。
YouTubeで検索すると聞くことができると思います。
まとめ
一人の女子高校生の投書からつくられた「瞳を閉じて」。
島の人々に愛される1曲となりました。
また、そんな経緯を知らなくても荒井由実・ユーミンの瑞々しい歌声が心に響く名曲ですよね。






